「カクテル」とは数種類の液体をミックスした飲み物です。例えば「水割り」というのもカクテルの一種と言えるかもしれません。かならずアルコールを含めなくちゃいけないということもありません。果汁を搾って甘みを加えてソーダで満たす、というのも立派なカクテルです。
「カクテル」という語が広まったのは、そんなに大昔のことではありません。ですが、カクテルという語がなかった時代でも、例えば非常に苦い薬用酒を、果汁で割って飲みやすくする…などの工夫は、もっと以前から行われていたでしょう。
「カクテルは悪酔いする」と敬遠する声もたまに聞かれます。決してそんなことはありません。できる範囲で上質な材料を用いて、キチンと丹誠こめてつくったカクテルは最高の一杯になり得るものです。あまりに美味しくて飲み過ぎた挙げ句に二日酔い…というのは、カクテルだからというより、単に酒量をオーバーしたためでしょう…。
バーのシーンにおいて、シャカシャカとリズミカルにシェイカーを振るバーテンダーの姿は、数少ない華やかな場面の一つでしょう。「シェイク」とは、シェイカーと呼ばれる金属製やガラス製の入れ物に材料と氷を加えて振ることを指します。シェイクの特徴・利点を挙げてみます。
- 1
- 混ざりにくいものを混然一体化させる
- 2
- 中身を急速に冷やす
- 3
- アルコールのカドが取れて飲みやすくなる
- 4
- 液体に空気をとりこむ
おおまかに上記のことが挙げられると思います。個別にもう少し補足してみます。
1番については、例えば材料に生クリームや卵(卵黄や卵白)などを含むカクテルの場合です。液体の比重が大きく違う場合、ただ掻き混ぜるだけでは充分混ざり合いません。
2番については、振ることにより、多く素早く氷と触れさせて短時間で冷やせます。ですから、混ざり合いながら、しかも必要以上に水っぽくなる前にちゃんと冷やせます。
3番について。アルコールの角を取るというのは何も言葉の例えでなく、本当に分子レベルの変化がみられるようです。これによって、強いお酒も少し飲みやすくなるのでしょう。例え混ざり合いやすいお酒同士でも、次の4番のことも含めて、シェイクする意義はあるのです。
ヨーロッパの骨董屋で見つけたアンティークのシェイカー。銀製。
そして、シェイクの大きな特徴であり、ポイントでもある4番目です。
シェイカーの中で材料が混ざりつつ冷えながら、一緒に空気を取り込むのです。抹茶を茶筅でシャワシャワするのと同様、ふんわりと混ざった空気により舌に触る感触も柔らかくなります。
ですから冒頭で「数種類の液体を」と書きましたが、たとえばウォッカだけ、または、オレンジ果汁だけをシェイクするのも、またひとつの手だと思います。
さらに言えば、カクテルブック等で「ステアしてつくる」と記述していても、たまにはシェイクして作ってみると、またひと味違った美味しさが見えてきます。透き通った液体(ジンやウォッカなど無色のお酒に限らず、たとえば赤い色のカンパリなども)をシェイクすると、最初のうちはこまかい気泡を含んで白濁しているのが、徐々に澄んでくるのが眺められるでしょう。
ただし、ぬるくなる前にどうぞ。