醸造と蒸溜

バーにおいてよく聞く単語に「醸造」と「蒸溜」があります。
例えば「醸造酒」「日本酒の醸造所」や「蒸留酒」「ウィスキー蒸溜所」等と。こうして文字で見れば、別物だと判る気がしますが、会話の中では「ジョウゾウ」「ジョウリュウ」という風に音が似ているため、割と混同されているようです。
それでは具体的なお酒を挙げて、醸造と蒸溜の違いを述べていきたいとおもいます。

醸造

読んで字の如く「醸(かも)して造られた」という意味です。
代表的なお酒としてワインやビール、日本酒などがあります。原料となる果実(ブドウやリンゴなど)や穀物(麦や米など)、動物の乳などが発酵、アルコールを含んだ液体が得られます。麦などの穀物は、そのままでは発酵しないので酵母を加えて発酵を促します。果物の場合は極端な話、腐ればそれがそのまま醸造酒です。もしかすると太古の昔、偶然に恵まれた条件の下、天然発酵して出来た液体を、我々の祖先が口にしてほろ酔い気分になっていたかも知れません。

醸造過程で、アルコール濃度が高まってくると、生きた酵母自体がアルコールに酔うために発酵もストップします。まさに「生きたお酒」という感じがして面白いものです。酵母の種類にもよりますが、アルコール度数は高くても20度前後くらいにしかなりません。

蒸溜

小学校か中学校のころ、実験でやったかもしれません。「蒸溜」とは要するに「異なる2種類以上の混合液から一つの液体を取り出す」事を言います。お酒で言えば「アルコールと水の混合液(醸造酒)からアルコールだけを取り出す」事です。具体的にはブランデーやウィスキーなど。

蒸溜方法は幾つもありますが、現代のお酒の世界での蒸留法は「沸点の違い」を利用する方法が一般的です。ご存じのように、水(液体)が沸騰して湯気(気体)になるのは100度(沸点)です。これがアルコールの場合、沸点は約78度です。ということは、アルコールの混ざった液体を熱したとき、水より先にアルコールの湯気が立ち上るのです。その気体だけを集めてのち、冷やして液体に戻せば、最初の液体よりアルコールを多く含んだお酒ができあがります。これを数回繰り返せば、より高濃度のアルコール液(蒸溜酒)となるわけです。

以下は余談。上記は「沸点の違い」を利用する方法でしたが、冷却する方法もあります。零度以下に凍らせ、先に凍る水(氷)を次々に取り除くというものです。ほかには「液体分子の大きさの違い」を利用する方法なども。例えば、動物の膀胱に混合液をいれ、より小さな水の分子だけが染みでた後に残る液体が、よりアルコール度数が濃いという訳です。実際に、このような方法を記した昔の文献があるようですが、精度は低く、とても美味しい代物とはいえないようです。

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