思い出のコマーシャルがあります。
荒野のような場所に異国の大道芸人と思しき数人と、正装した男性。
バックに奏でられるエキゾチックな音楽。
そして、詩人ランボオについて語る男性ナレーション。……
これが何のCMなのかは、最後のほうまで判りません。とはいえ、ここまで読んでピンと来たかたもおられるかも知れません。
じつはコレ、80年代に流されていたサントリーのCMです。ひと言ふた言で言うならば、なんという格好良さ!センスの良さ!
なんとかもう一度観られないものかとずっと思っていたのですが、先日ふと思い付いて、ユーチューブでさがしてみるとありました!
「サントリー・ローヤル」という銘柄のウィスキーだったのを、今回改めて知り(もうひとつ、ガウディ編というものがあったのも知りました)、というよりこの際、まだ子供だった私には具体的な商品名はどうでもよく、名コピー(ランボオと言われても、スタローンのランボーしか当時は知りませんでしたが)と音楽、そして大人への憧憬を心に刻み込まれたのでした。
嗜好品というのはこれくらいの広い視野と、ずっと先を見据えた思考を持つほうが、商品の連呼よりずっと良いのではと思えます。
「本物である」自信があればこそ、鷹揚に構えて、余裕を見せて、イメージを膨らませ、憧憬を植え付けて…。必需品や緊急性のものとは違い、嗜好品です。焦らずにいればやがて、逆にそこへ行き着く事でしょう。
例えば、昨今のネットのような個々のニーズに向けたピンポイントの宣伝は便利に思える反面、なんだかちょっと世知辛く、これくらいのゆとりが再び注目されるといいなぁと思います。今回で言えば、なんと言っても扱うモノはウィスキーです。それこそ焦らずじっくりと、熟成という長い長い年月が育む、至福の滴ですから…。
この文章、サントリーにも投書しようかしら。
オレンジメイル 2008年 6月配信分
追記:投書こそしませんでしたが後日、このオレンジメイルをご覧になった馴染みのお客様が、サントリー・ローヤルのコマーシャルを制作なさった当のご本人をお連れ下さいました。
なるほど、こんなコマーシャルを創るのも宜なる哉、といったダンディさでございました。
なお、画像はローヤルが手許になく、代わりと言ってはなんですが、山崎です。