あるミステリー小説を読んでいて、とても興味深い記述に出会いました。ガラスの不思議な性質に関することです。
それによりますと、ガラスは常識的には固体ですが、結晶を作らず原子の配列が不規則に並んでいる為、とてつもなく「粘度の高い液体」と見なされるそうです。
ところが、モース硬度では鉄が4・5なのに対して、普通のガラスで5・5、石英ガラスにいたっては7・0と、およそ液体のイメージとは対極にあるような、非常に硬い物質なのだそうです。そのくせ、ご存じのようにあんなに儚くて、もろいのです。
毎日、お酒を注ぎ、洗っては磨き、ときには不注意で割って…。そんなふうに何気なく手にしているグラスですが、なんだか違った一面を発見したようで、いとおしさも増してくるものです。
なお、上記の記述は、ミステリーの核心部分とは直接関係ないのですが、これから読まれるかたもいらっしゃると思いますので、逆にタイトルなどは省くことにします。もし興味がおありでしたらどうぞお尋ねください。
オレンジ便り 2005年 2月配信分
追記:貴志祐介「硝子のハンマー」角川書店 写真の左上に写るのはバカラのクリスタルグラス