ウィスキーが特に美味しく感じられる季節です(注:この文章を配信したのは冬場でした)。
おいしい酒造りの条件はいろいろで、澄んだ空気や清涼な水も大切な要素のひとつでしょう。となると、ある程度、辺鄙な場所に蒸溜所があるのは仕方ない事です。
スコットランドでの蒸溜所巡りの際はレンタカーが至極便利でした。妻が運転、私はナビです。ただ、慣れない土地と運転に加え、前述の通り、少し奥まると目印もままなりません。手元の地図によれば間違いはないハズだけど、なにせ細い山道とうっそうと茂る木立だけ。ルートを示す標識もなかなか現れません。
確信が持てず、不安が頭をもたげはじめたころ、なんとなく見たことのある、たぶん世界的にも有名なタイヤメーカーのロゴを記した大型車が停まって、何やら作業中でした。これ幸いと、私は車を降りて現在地の確認をとりに走りました。私のつたない英語のせいでいくぶん時間が掛かりましたが、手描きの地図を渡してくれたりと、懇切丁寧に教えてくれました。
文中の山道の場所と、この写真の風景とはあんまり関係ありません…。
…いっぽう、こちらは少し離れた場所で待つ、運転席の妻。
日中の明るい時間とは言え、人は勿論、行き交う車や建物すらなく、しかもこんな山中に屈強な体の男が何やら3〜4人。
そんなところ(妻はそのタイヤメーカーは知らなかったようです)に夫はノコノコと道を聞きに行き、あまつさえ体を半分乗り入れており、イライラする時間だけが過ぎてゆく……。
このとき妻はこう思ったそうです。もしこの直後、夫の体が相手の車に引きずり込まれる様子が少しでも見られたら、躊躇なくギアをバックに入れ、逃げ出すつもりだったと…。
冗談にしても恐ろしい妻です。
オレンジ便り 2007年 12月配信分
追記:なお、写真はイメージです。道を尋ねた場所は、高い樹々が生い茂る山道でした。
この写真は、スペイサイド地方の、とある蒸溜所の付近から眺めた風景です。