ウィスキーとは、麦やトウモロコシなどの穀物を原材料とする蒸留酒です。いろいろな国で生産されていますが、特に有名なのは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、そして日本でしょう。アルコール度数は40度くらいから、強いもので60度を越すものもあります。木の樽で数年から十数年、なかには数十年もの長期にわたって寝かせる(熟成)ため、最初はすべて無色透明だった原酒も、琥珀色をしているのが特徴です。
それでは、国別・タイプ別にみていきます。(ウィスキーの詳しい製造工程などはここでは省略します。産地や特徴、細かな違いなどはありますが、おおまかには似通った工程を踏みます。いつか別ページで解説したいと思います。)
黒ビールのギネスが有名なアイルランド。ここアイルランドでもウィスキーづくりが盛んで、アイリッシュ・ウィスキーと呼ばれて親しまれています。
「アイルランドでも」というよりむしろ、スコットランドとどちらがウィスキー造りの元祖かという論争が絶えないほど、古く長い歴史を誇ります。例えば、アイリッシュを代表する銘柄「ブッシュミルズ」のボトルのラベルには「世界最古のウィスキー蒸溜所 1608年」と操業が始まった年が記されてあります。ということは、2008年で創業400周年という老舗中の老舗です。
そんなアイリッシュ・ウィスキーですが、蒸溜所の数自体は数カ所しかありません。生み出されるウィスキーのタイプや質は、スコッチのブレンデッドに近いものです。詳細は書ききれませんが、要はモルトとグレーンをブレンドした、親しみやすく飲みやすいタイプです。
ただ、勿論スコッチと異なる点がいくつかあります。まず第一にモルト原酒を造る際の蒸溜回数です。スコットランドにおいて、ほとんどのモルト原酒の蒸溜回数が2回に対して、アイルランドでは3回蒸溜が一般的です(当然のことですが、これはおおまかな言い方であって、それぞれ例外も多数あります。以下の文章も同様にとらえてください)。蒸溜回数は、より多くおこなえば、アルコール度は高まりクリーンな酒質になりますが、そのぶん、素材が持つ本来の風味や骨太さにやや欠けます。どちらが良い悪い、ではなく、どのようなウィスキーづくりを目指すかの違いです。
スコッチとの違いのふたつ目は「ピートを焚かない」という点です。ピートとは、植物などが長期のあいだ堆積してできた泥炭のことです。スコッチ造りの工程の中で、大麦麦芽を乾燥させる際にピートを燃やすのですが、アイリッシュ・ウィスキーでは殆ど使われません。この違いが、独特のスモーキーさを持つスコッチとの差です。ただし、近年のスコッチ人気の影響なのか、強くピートを薫きしめるアイリッシュ・ウィスキーも見受けられるようになりました。
一番最後になりましたが具体的な銘柄を挙げておきます。上記ブッシュミルズの他、「ジェムソン」「タラモア・デュー」「カネマラ」などがよく知られています。