２０１０年５月２日、西麻布バーオレンジも開店１０周年を迎えることができました。これもひとえに、日頃より支えて下さったお客様のご支援の賜物でございます。改めて深くお礼申し上げます。
１０年という節目ですが、実のところ、あまりピンと来なかったというのが率直な印象です。ただ振り返ると、世の中も西麻布周辺も少しずつ、そして確かに大小の変化が見られました。オープン当初は当然ながら一番の新参者だったこのビルでも、気付けばいつの間にか一番の古参になっていました。
周辺には六本木ヒルズや東京ミッドタウン、国立新美術館などのオープン、海外でも大きなテロや経済の破綻…など。決して平坦ではなかったにしろ、こうして続けてこられたことに感謝し、また新たな年月を重ねていければ幸いに存じます。
ところで、あるお客様より１０周年のお祝いにと、たいへんすてきな贈り物を頂戴しました。「座興杯」です。皆さんご存じでしたか。
いただいたこの座興杯、大きさの異なる五つの漆器があり、それぞれに「松竹梅鶴亀」のいずれか一つの図柄の箔。小さなサイコロも用意されており、振って出た図柄の杯でお酒を干す…という趣向です。
ただしサイコロは六面ありますから、残り一面の「うた」と出たら「歌・唄・詩」を歌うなり詠むなりしなければなりません。なんとも洒落た逸品です。
杯を重ねて、サイコロも一緒に収納すれば、大きさも赤ちゃんの握りこぶしくらいでしょうか。この座興杯の銘は「橙」。西麻布バーオレンジという店名にちなんで選んで下さったそうです。描かれた葉っぱの一枚が虫喰いになっているのも可愛らしい座興杯、でも何より、そのお気遣いが一番の贈り物でした。
いつも目立つ場所に飾ってありますので、ご来店の際には一度お手に取ってご覧くださいね。
書き下ろし 2011年 9月
